ラボマスター:團 紀彦
ラボディレクター:黒川かこ、蜷川有紀
第4回 共生ラボのご案内:
第4回共生ラボは4月20日に日本学術振興会の理事で東京大学名誉教授の家 泰弘先生をお招きして下記の御講演をいただくことになりました。
是非御参加ください。
当日は18:30よりドリンク等をご用意してお待ちしております。
ラボマスター: 團 紀彦
ラボディレクター: 黒川かこ、蜷川有紀
■ 日 時 :2017年4月20日(木)18:30~21:00
■ 場 所 :国際文化会館
■ 講 演 :19:00~20:30
家 泰弘先生
「相互作用とゆらぎが織りなす協力現象 ― 磁性・磁気現象を題材として」
■ 会 費 :5,000円
■ 申込先 :團紀彦建築事務所 邱 暁慧 宛 sophy-kyu@dan-n.co.jp
※上記にメールにてお申し込みください。
家 泰弘 先生
講演テーマ:「相互作用とゆらぎが織りなす協力現象 ― 磁性・磁気現象を題材として」
鉄を引き付ける不思議な物質、磁石(磁鉄鉱)の存在は古代から知られていました。古代ギリシャでは「マグネスの石」「ヘラクレスの石」「ロードストーン」などの名称で知られ、古代中国では(「母が赤子を引き寄せるがごとし」ということで)「慈石(じせき)」と呼ばれていました。遠隔作用である磁力はオカルト(目に見えない)現象の代表格でした。方位磁針が北を指すことは、(月と潮の満ち干との関係と並んで)天界が地上界に影響を及ぼすことの紛れもない証拠と考えられ、占星術の根拠の一つとなっていました。
中世からルネサンス期の磁力研究は、女王エリザベスⅠ世の侍医でもあったギルバートが著した『磁石論』において一つの集大成を見ましたが、その内容はケプラーによる惑星運動の研究やニュートンによる万有引力の概念形成にも影響を及ぼしました。一方、パラケルススなどルネサンス・オカルティズムの流れを汲むメスメールの「動物磁気」は、今日でも「磁気療法」という名の似非科学として蔓延しています。
磁石が示す強磁性の本質は、量子力学に基づく物性物理学によって理解されます。その起源は、原子レベルのミクロな磁石(磁気モーメント)の集合体において、磁気モーメントが量子力学的相互作用によって向きを揃えた秩序状態を形成することにあります。秩序形成のメカニズムは、相互作用の強さと熱的なゆらぎの度合いとの兼ね合いで決まるものであり、多体系における「協力現象」「相転移」の代表例です。
講演では、科学史において磁石や磁力がどのように捉えられていたか、それが世界認識にどのような影響を与えたかを繙くとともに、現代物理学が説く磁性の本質―相互作用とゆらぎが織りなす協力現象―をお話しします。そして、そこに登場する概念が人間社会集団にも適用できるかどうかを皆さんと考えてみたいと思います。
■家 泰弘(IYE, Yasuhiro)先生プロフィール:
現職: 日本学術振興会理事、東京大学名誉教授
専門: 物性物理学
学歴: 1974年3月 東京大学理学部 物理学科 卒業
1979年3月 東京大学大学院理学系研究科 博士課程修了 理学博士
職歴: 1979年4月 東京大学 物性研究所 助手
1982年9月 米国 AT&T ベル研究所 物理研究部門 研究員
1984年9月 米国 IBM トマス=ワトソン研究所 研究員
1985年9月 東京大学 物性研究所 助教授
1994年4月 同 教授
2008年4月~2013年3月 物性研究所長
2015年9月 東京大学退職
2015年10月 日本学術振興会 理事
その他: 1991年8月~1993年7月 文部省 学術調査官
2001年2月~ 現在 文部科学省科学技術・学術審議会臨時委員・専門委員
2009年3月~ 2017年2月 文部科学省 政策評価有識者会議委員
2000年6月~2004年5月 日本学術振興会 学術参与
2011年9月~2012年3月 日本学術会議 第三部部長
2012年4月~2013年9月 日本学術会議 副会長
2012年4月~2013年3月 日本物理学会 会長
主な研究: 半導体2次元電子系、人工メゾスコピック構造、グラファイト、グラファイト層間化合物、
有機導体等における量子輸送現象
高温超伝導体の物性および量子磁束系の物理、メゾスコピック超伝導
著書: 『物性物理』 産業図書
『超伝導』 朝倉書店
『量子輸送現象』 岩波書店
『物性科学ハンドブック』 朝倉書店
訳書: 『自然のしくみ百科 宇宙からDNAまで』 丸善出版
『人の脳はどれほどユニークか』 三田出版
『君がホットドックになったら』 三田出版
以上。