日本文化デザイン大賞 |
堺屋太一 氏(経済企画庁長官、作家)
[授賞理由]
堺屋太一氏は常人では実現できない複合的なキャリアを達成し、ルネサンスや安土桃山人のような超人的な文化活動を現代に実現するだけでなく、その類いまれな活動を日本とアジアの未来への貢献というテーマに向けることによって、この国の進むべき方向を常に示しつづけている。
官僚として日本現代文化の土台を形成した大阪万博を成功へと導き、『油断!』や『知価革命』のような執筆活動によって近代日本の欠陥を指摘、また現在は経済企画庁長官として、あえて行政という実践に飛び込むことによって、その改善に着手している。政治の場面には文化が凝縮して姿をあらわす。堺屋氏は日本経済を金融恐慌の淵から救出するための経済政策をデザインし、それを政治の場で実現させた。他に類を見ない八面六臂の活躍は日本文化デザイン賞の受賞者としてふさわしいものであると同時に、日本文化デザインフォーラムの仲間として、フォーラム会員全員からの熱いエールをここに贈りたい。
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日本文化デザイン賞 |
仁成 氏(作家)
[授賞理由]
多彩な表現者として、ロック音楽からテレビドラマの脚本、映画の監督など多方面において活躍。しかし、その中心は何と言っても詩と小説である。「白仏」が欧州文学界最高の賞の一つであるフェミナ賞を日本人で初めて受賞。大きな注目を浴びたことは記憶に新しいが、この作品は明治、大正、昭和を貫いた仏像制作の一族の物語で、次代の文学を担うものとして、フェミナ賞審査会において圧倒的評価で支持されたものである。この方向こそ、すばる文学賞、芥川賞から一貫した芸術的姿勢である。
フェミナ賞受賞後、一転して「冷静と情熱のあいだ」「嫉妬の香り」と浪漫的傾向の作品を発表し、ますます幅の広い才能を発揮している。彼の文学は、丁寧に言葉を一つ一つ選びぬく姿勢から始まり、すぐれた詩人としてのセンスが作品に他では得ることのできない魅力をつくりあげている。その作品はフランス全土の書店でも販売され、世界のトップクラスの文学者として確固たる立場を築きつつある。同時に「日本文学を守る」と公言してはばからないその存在は日本文学の明日の可能性を象徴している。
望月六郎 氏(映画監督)
[授賞理由]
現代日本の若手で最も注目を浴びている映像作家。日活ロマンポルノの助監督としての経験からその基礎を学び、アダルトビデオ制作の中で、人間の容易に察せられない微妙な心情を表出する技術を身につけ、本格映画へと出帆。シカゴ映画祭、ロッテルダム映画祭の成功は海外のメディアで大きく取り上げられ、また国内ではキネマ旬報監督賞等を受賞し、まさに活躍は飛ぶ鳥を落とす勢いである。大学で仏文学に親しんだナイーブな感性と、ヤクザ映画を数多くものした鋭利なリアリストとしての側面により、現代日本文学の世界を明暗ない交ぜにした湿度感のある映像表現としてまとめ上げ、非凡な才能を証明した。望月監督のユニークなところは、一言で言えば土着的にして国際性があるところであり、日本映像界の21世紀の輝く星となってくれるに違いない。
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企業文化賞 |
福原義春 氏((株)資生堂 代表取締役会長)
[授賞理由]
資生堂グループの総帥である福原義春氏は、「美」をテーマとする企業活動のみならず、そのテーマを社会との接点や、それに対する貢献という次元にまで展開することによって、日本文化の育成、発展に大きな貢献を果たしてきた。経営理念的に21世紀を先取りした自社の文化的運営のみならず、東京コレクションをはじめとするファッション界への貢献、資生堂ギャラリーの活動や展覧会へのサポートという形での美術界への貢献など、その文化貢献活動は枚挙に暇がないが、企業メセナ協議会の設立や「フランスにおける日本年」の成功などは、長く後世にまで語り継がれるべき事業である。ここに最高の敬意とともに同氏および株式会社資生堂に日本文化デザイン賞企業文化賞を贈呈したい。
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